三十路100%

部屋とワイシャツと三十路

ブックオフで読んだスラムダンクBL漫画の思い出

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中1の頃だったかな。漫画と本がいっぱいあって、立ち読みをしても怒られないブックオフが大好きだった。一番近いところでも家から自転車で20分くらいかかるところにしかなかったんだけど、幼馴染と私の二人は漫画が大好きだったから、二人で自転車をこいでよく行ってた。

 

私たちは同じバスケ部に入っていて二人ともスタメンで一年の頃から試合に出ていた。

多分私も幼馴染もそれなりに意識を持って練習をしてたし、なにより二人ともバスケが大好きで毎日練習に打ち込んでた。

 

夏休みになると部活以外は自由な時間がたくさんあったから、私たち二人はよく部活の終わったその足でブックオフに行っていた。

汗だくで向かう私たちを迎えてくれたのは、いつも冷房がガンガンにかかったブックオフだった。

 

主に私たちは当時流行っていた少女漫画(ラブ☆コン、悪魔で候、恋愛カタログとかその辺のやつ)を読んでいたが、基本的にはお互い好きな本や漫画を自由に読むスタンスだったので、いつも一緒にいるわけではなかった。

気づけば幼馴染はCDを物色していたりしたし、私もお姉さんが読むような雑誌を見て「私、オシャレの事とかもうわかってるよ?」っていうフリをしたりと、漫画コーナー以外にも私たちを楽しませるところはたくさんあった。

 

私たちの通っていたブックオフはお店の前に自動販売機がたくさん並んでいたのだけど、その中でも紙コップで出てくるリアルゴールドを飲むのが、私たちなりに一番最高の休憩の仕方だった。たまにカルピスやメロンソーダを飲んでは見るけどあの時代の私たちはリアルゴールドに夢中だった。

 

時には道中の駄菓子屋で駄菓子をたくさん買い込んでから向かったり、ドラッグストアでパンやお菓子(もちろんルマンドも)を買って行ったりもしていた。

 

漫画を読み疲れると、外に出てブックオフの近くにあった空き地でリアルゴールドとこれらのお菓子を食べながら休憩していた。

 

ブックオフで漫画を読むのは楽しくて大好きだったけど、今思えばこの休憩時間に幼馴染といろんな話をする事こそが私がブックオフに行く本当の目的だったのかもしれない。

 

部活の話、好きな人の話、最近気になってきた化粧品の話、ファッション雑誌のはなし、学校の不良たちの話、家族の話。いろんな話をしながら日が暮れるまでおしゃべりし続けた。

 

漫画を読むときは別々だけど、空き地でおしゃべりをするときは二人で腹を抱えて笑ったり、真剣にお互いの気持ちをぶつけ合ったりしていた。

まるで友達と家族の中間のような関係がわたしにはとても心地よかった。

 

その日もいつものように午前中の部活を終えて、お昼ご飯だけ食べた後に集合した私たちは自転車を立ち漕ぎで走らせていつものブックオフに向かった。

 

ブックオフにつくといつものように少女漫画コーナーに向かう幼馴染に一声かけて、私は店内をぶらぶらする事にした。たった今まで炎天下の中を自転車を漕いできたので、少し涼みたいなと思っていたからだ。

そうして火照った体を冷やすべく店内をぶらつく私の目に止まったのが例のスラムダンクだった。

 

私はバスケ部だったが、スラムダンクを最後まできちんと読んだことがなかった。

家にはもちろんなかったし、周りの友達にも持っている人がいなかった。

だからこそケーブルテレビのキッズステーションという番組でたまにスラムダンクが流れるとかじりつくように見ていたのだが、本当はきちんと原作を最後まで読んで見たかった。

そういうわけで幼馴染とブックオフに行くたびになけなしのお金で一冊ずつスラムダンクのコミックを買い集めていたのだが、中学生のわたしにはそれは長い道のりだった。

 

例のスラムダンクを見つけた時は確かまだ7巻くらいまでしか単行本を買えていなかった時だと思う。

わたしの目に飛び込んできたスラムダンクはとても分厚い本だった。

その分厚いスラムダンクを見て、わたしはなぜかスラムダンクを一冊にまとめて売っている、今で言う完全版的なものであると認識してしまった。

 

わたしは迷いなくそのスラムダンクを手に取った。裏を見てみる。「うわっ!700円もする!」と値段に一瞬驚いたが、この一冊で全てを網羅するのであれば残りの単行本を買うよりはるかにお得なことは理解していた。

 

わたしは自分ルールでスラムダンクの立ち読みはしないと心に固く決めていたのだが、この時ばかりは中身を確認して、購入を検討する必要があった。7巻以降のシナリオはできれば知りたくなかったので、本の最初の方をぱらりとめくったその瞬間。

なにかの異変を感じた。描かれているキャラの絵が微妙に違うように感じたのだ。そりゃそうだ。これはBL本である。井上先生の魂は1ミリも入っていない。

 

少し不思議に感じながらもぱらぱらとページをめくったわたしの目に飛び込んできたのは紛れもなく桜木花道と流川楓の濃厚なキスシーンだった。なぜかそこに「左手は添えるだけ」というあの言葉も書かれていた。

よく分からなかったわたしだったが、とにかく凄いスピードでその場から立ち去る必要があることを感じ取った。

「なんか、多分、エッチな本だ」と第六感に語りかける何かを感じ取った。

 

そして、混乱した頭のまま幼馴染に

「あっちに、す、スラムダンクが…」とだけ伝えた。

なんて馬鹿な奴だったんだ。いま時間を戻せるならきちんと幼馴染に伝えることができるのに。そしてあの事故を止めることができたのに。

 

 

それを聞いた幼馴染は満面の笑みで「あっちにもスラムダンクあるの?!」と足早に例のスラムダンクの方に向かってしまった。

急いで追いかけたわたしだったが、少しだけ、あの中身をもう一度見てみたい。幼馴染にも見せたい。と思ってしまった。

 

 

幼馴染は例のスラムダンクを探し出し(慌てていたわたしはきちんと棚の中にしまっていなかった)の前まで行き、迷うことなくその本を開いた。

 

そして一言

「ゴリ……。」と呟いたのだった。

 

 

とにかくそれがわたしと幼馴染のはじめてのBL体験だった。

あの時彼女がゴリのどんな姿を見たのかはわからない。でもわたしはその後もスラムダンクをちまちまと買い揃えたし、幼馴染もそのスラムダンクを読んできちんと泣いた。

その後私たちは同じ高校に入って二人でバスケを続けた。今でもスラムダンクは全巻揃ってわたしの家にあるし、二人の間でスラムダンクは最高の漫画だという共通認識もある。

 

 

それでも未だに花道と流川のあの絵をはっきりと思い出してしまうのだからBLって力強い。

幼馴染は今でもゴリの姿を思い出す時があるのだろうか。

 

あの漫画の作者に会うことができたら伝えたい。あなたは誰かの心に残る作品を生み出したんですね。と。